弟矢 ―四神剣伝説―
それを見た弓月は、神剣を持つ手に力を籠める。覚悟を決め、渾身の力で抜こうとするのだが、なんと、それを上回る力で乙矢は押さえ込んだ。

そして乙矢は弓月の脇差に手を掛け、引き抜いた。

振り返り様、刀を持つ敵の腕を一刀両断にした!


「俺は……殺したくない。頼むよ。このまま、引いてくれ」


風をも切り裂きそうな鋭い剣捌きとは相反して、乙矢の声は震え、上ずっていた。


「ふざけるなぁっ!」


それまで、女の後ろで震えていた男に仲間を斬られ、数人が束になって襲い掛かる。

乙矢は、唖然とする弓月を、凪のほうに突き飛ばす。

そのまま、脇差を順手に持ち帰え、あっという間に五人の男を斬り伏せた。さすがに、腕だけとは言っておられず、全員が一瞬で事切れる。まるで、『かまいたち』にでも襲われたかのようだ。


「頼むから……引いてくれよ」


武藤は得体の知れぬものを見たかのように固まっていた。


「貴様……何者だ。爾志の次男坊は、刀の持ち方も知らぬ腑抜けであったはずだ。まさか……」


その時、凪が恐ろしいことを口にする。


< 56 / 484 >

この作品をシェア

pagetop