Oursecret
「あ…のさ…」


俺は断ろうとする。こういうことは誰にでも言うことじゃない。だけど相手は友達。迷ったけどやっぱり言い出せない。身内のことは知られたくない。だが優希は見逃してくれるわけがない。


「海斗。俺さ海斗に信頼されてないのか?」


「え?」


「だって話してくれないのは信頼されてないから、だろ?」


優希はピアノの弦に触れながら少し口調を弱めて話す。


「そういう訳じゃない。」

「じゃなんで?」

直ぐに聞き返す。俺は言い返せずに黙ったままでいた。


「俺は海斗の力になりたい。悩んでるとき相談すると楽になるんだよ。どう?これじゃ話す気にならない?」


「うーん…」


俺はまた迷いながらも話すことにした。






───10分後。

「つーわけなんだ。だから俺…話すの戸惑ってた。」


「だろうね〜。じゃあさ、そんなことあってさ今の状態のままでいいと思ってる?」


視線が泳ぐ。心の中じゃそんなことなんて思ってないんだ。優希の言葉で考え方が変わって俺は考え直した。


「思ってないよね?」


俺は頷いて肯定をみせた。


「じゃあ行って来なよ。」


「えっ?」


不意に言われびっくりした。優希は目線を俺に向ける。


「海斗はさ、伊織ちゃんを傷つけたいの?」

「違うっ…俺はそんなこと…むしろその逆で…っ…その…」

まだ戸惑いを隠せない俺に優希は助言する。


「それ、伊織ちゃんには伝わってないんだよ?態度じゃなくて言葉で表現しないと伝わらないんだよ。だからその続き、本人に言いなよ?」


言いたいけど会えばまた気まずくなる。俺はそんなことばかり考えていた。


「はっきりしなって。…あ〜あ。今ごろ伊織ちゃんは泣いてるかなぁ。」


俺は何かを思い出したかのようにドアを思い切り開くと走り出した。


「手の掛かる2人だね。全く。フフフ…まぁそこがまたいいんだけどね〜。」


そう言うとピアノに触れていた手に力を込めた。そして校内にキレイなメロディーが響き渡っていった。






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