ハッピークライシス



「…またお前か、"青薔薇"」

「そう名乗った覚えはないが。彼女を攫ったのは俺だ」

「頼むから、レヴェンの所有物を狙うのはやめてくれよ。幼馴染を消したくはない」


ユエは小さく口元に笑みを浮かべただけで、何も言わない。
結ばれない約束は宙に浮いたままだ。


「端的に言えば、彼女に飽きた。困っているんだ。彼女と一緒に居ても何も感じないし、キスしたいとも思わない。けれど、手放そうにも難しい。だから、シンシアみたいな"信頼出来るマフィア"に買い取ってもらえれば…」

「……お話中、失礼します。珈琲、お代わりお持ちしました!!!」



話の途中、女性店員が声を荒げて割り込んだ。

がちゃんと目の前のテーブルに珈琲カップを勢いよく叩きつけられ、まるで吹き上げられた噴水の如く、珈琲が飛び散った。シンシアが辺りを見渡せば、女性達から敵意たっぷりの視線が注がれているのに気づく。

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