ハッピークライシス
聞きなれた声に名前を呼ばれ、うっそりと目を覚ます。
眼前には、目にいっぱい涙を浮かべたシホが、心配そうな表情でユエを見下ろしていた。
ゆっくりと身体を起こして、周囲を見渡す。
そこは、枯れた大地に冷たい風が吹き抜ける、薄汚く朽ち果てた建物が集まって出来ただけの町だ。
頭に手をやろうとしたときの、自身の掌の小ささに驚く。よくよく見れば、目の前のシホは自分と同じ黒髪だった。今は、鮮やかな真紅に色を染めていたはずだ。
それにどこか、幼い顔立ち。
―ああ、これは過去の夢か。
夢の中で納得をした。
この場所を、ユエは当然のごとく知っていた。物心ついたころには、ここでシンシアやシホと暮らしていたのだ。
『こんな場所で倒れていたから、死んじゃったのかと思ったわ』
『そう簡単に死なないよ。相変わらず、泣いてばかりだな。シホは』
『だって!!』