ハッピークライシス
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「"350万ドルで買い取ってやるよ。その代わりに、今から誕生会に付き合ってくれ"」
バーを出たところで、ベンツに乗り込みながらシンシアはそんなことを言った。
名画メテオラの乙女の価値に見合う値とは思えないが、興味を失ったものに対してそれ以上交渉するのも面倒だった。
「ああ、構わない」
ユエがそう返答した瞬間、バックシートに置かれていた高級スーツを手渡された。
着替えを済ませ、有無を言わさず連れてこられた会場は、政治界の重鎮であるフィリップ=フェデリコの屋敷だった。
"誕生会"とかいうから、どんな可愛らしいものかと思いきや、60代も後半の太った男のパーティか。ゲンナリしつつ、車を降り、シンシアの後ろについて門をくぐる。
濃紺と橙のグラデーションに染まる空と、白亜の屋敷はまるで一枚の絵画のようだった。薔薇の咲き誇る庭園を抜け、フェデリコの若き妻がシンシアとユエを迎えた。