ハッピークライシス
「ようこそいらっしゃいました。ジェイド様、ロゼ様」
「お目に掛かれて光栄です、マダム」
シンシアは微笑み、そっと彼女の手をとり甲に口付けする。
さっと頬を朱に染めたマダムに案内され、ホールへと通された。
「ジェイドというのはお前のことか」
「ああ。青年実業家だった男の名だよ。表では随分羽振りよく振る舞っていたようだが、株で大損。死に損なってたところを人生ごと金で買った」
「…ロゼというのは?」
「恋人。奴は男色家だ」
シンシアは、ユエが苦虫を潰したような顔をするのを楽しげに笑い、シャンパンを片手にゆっくりと人々の輪に混ざっていった。