ハッピークライシス
その時だった。
トントン、と真横から肩を叩かれてハッとする。
怒ったような表情で自分を睨み上げる女性。気配なく自分に近づいた彼女に目を見開いた。
「シホ。驚いた、凄く綺麗だ」
「(なんで、あんたがここにいるのよ!ユエ!!)」
真紅の髪をいまは黒に染め、ダークブルーのナイトドレスに大粒のダイヤモンドを身につけている。白磁の肌に映えたそれは美しく輝く。
「ユエじゃない。今はロゼだ。恋人に付き合って、退屈なパーティで時間を持て余している」
「…ロゼ?」
怪訝な顔をするシホに、ここまでのことを短く話した。