ハッピークライシス


特に気に入っていたのは、スイスメイドのサファイアガラス覆われた金時計だったという。文字盤は2カラットのダイヤモンドが嵌め込まれている。シリアルナンバーが振られたその腕時計は全世界限定生産数25。ロマッリオの持つナンバーはⅢであった。


「……肌身離さず身につけていたそれが、死体にはなかった。海に投げられたときにでも外れたのかと思っていたが、意外なところで見つかった」


シンシアの瞳に、静かに怒りの焔が揺れる。
ユエは、その横顔から全てを悟った。その金時計は、フィリップ=フェデリコの左手首に嵌っていたのだ。


シリアルナンバーは、"Ⅲ"。

左手で握手を求め、シンシアはしっかりとソレを確認した。素性を調べていくと、どうやらフィリップ=フェデリコは、珍品や芸術品鑑賞が趣味だという。

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