執事ちゃんの恋






「相変わらずむかつく! ねぇ、ヒヨリ。やっぱり戻ってきて! お願い」


 嘘泣きをしながらヒヨリに縋りつくが、すぐに健にはがされてしまった。


「いくらコウのお願いでも、ヒヨリは渡しませんよ?」

「ちょっと健くんは黙っていてよ!」

「そうはいきませんよ。私のヒヨリですからね」

「違う! 私の大事な執事なんだからね、ヒヨリは」

「おや? コウはヒヨリを解雇したんじゃなかったかい?」

「そんなの撤回よ! 書類に残っていないんだから無効よ!」


 大人げない健に、ムキになるコウ。そしてそれを面白がって見ていたヒナタは、ヒヨリの耳元で囁いた。


「で、どっちを取るわけ?」

「へ!?」

「コウさまを、ヒヨリ好みのゴスロリファッションにして楽しむのか」

「っ!」

「昔から大好きだった健先生をとるのか」


 その問いかけは言い争っていた二人にも聞こえたようで、二人してヒヨリの顔を覗き込む。

 だが、なかなか答えをださないヒヨリに、コウと健は必死だ。


「ちょっとヒヨリ。悩むことなんてないでしょ? こんな悪玉みたいな健くんなんかより、私の執事しているほうが幸せよ! ゴスロリファッションだってしちゃうわよ。ってか、ヒヨリそういうの趣味だったの?」

「何を言っているんですか、コウは。ほら、早く断ってしまいなさい。いらぬ期待は持たせないほうがいいんですよ」


 キィキィ言い合う二人は、結局らちが明かない。
 言い争いに疲れた様子でヒヨリの顔を覗き込んだあと、二人は声を揃えた。



「「で、どっちを取る!?」」






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