この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 そして同年、深緑の初夏。



 緊迫する京からほど遠い、ここ会津の地で、

 何も知らない私達は

 穏やかな日々を過ごしていました―――。





 「だいぶ暑くなったわね」



 私の前にお茶菓子を差し出しながら、さき子さまはおっしゃる。



 「そうですね」



 春の到来が遅い会津でも、桜はとうに散ってその枝に新葉を出し、やわらかな風の吹く心地よい季節となっていた。





 ――――あれから時は過ぎて、



 さき子さまは 娘盛りの十六歳。

 兄さま達は 十四歳。

 私は、十三歳になった。



 さき子さまとはあれ以来、お互いの屋敷を行き来するほど仲良くなり、

 今日も私は家の用事を済ませたあと、さき子さまのところへ遊びに来ていた。



 「あ!そうだ!先日ね、綺麗な絵ロウソクをいただいたの!
 おゆきちゃんにもあげようと思って、大事に取っておいたのよ!
 ちょっと待っててね?いま持ってくるから!」



 そうおっしゃるとさき子さまは、開けた障子も閉めずに部屋を出てゆかれた。


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