この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 開け放たれた障子のあいだから、優しい風が吹き込む。
 あまりの心地よさに眠ってしまいそう。

 まぶたを閉じて 頬を撫でる風に身を任せていると、



 「ただいま戻りました!」



 昔よりいくらか低くなった、けど変わらない元気な声が聞こえてくる。

 それからドカドカと騒がしく廊下を渡ってくる音。




 利勝さまだ。




 思わずクスッと、笑みがこぼれる。



 気配が障子まで近づくと、利勝さまの少し戸惑う声が聞こえた。



 「……おい?眠っているのか?」



 あ。

 優しい風と一緒に、

 ふわり、お日さまと草の匂いが鼻をかすめる。

 外で元気に駆け回ってきた匂い。



 「おい。チビ?」


 「……チビではありません。私の名は、ゆきです」



 口を尖らせてまぶたを開くと、顔を覗き込んでいたのか、すぐ目の前に利勝さまの大きく真っ黒な瞳があって、



 「……きゃっ!」

 「わっ!」



 びっくりして、私達はあわてて顔をそらした。


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