この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 両手を添えて差し出した手拭いを見つめながら言葉を失う私を見て、あわててさき子さまが、利勝さまの背中を小突いた。



 「馬鹿ね!せっかく届けに来てくれたのに、そんな言い方ないでしょう?
 ごめんね?おゆきちゃん。
 この子ったら、おゆきちゃんの気持ちも考えないで、好き放題なことを言って!」

 「……いえ……」



 力なく首を振って、利勝さまを見上げる。

 さき子さまに叱られて、いっそうご機嫌が悪くなったみたい。

 私もさらに悲しくなった。

 そんな私を見かねてか、さき子さまが訊いてきた。



 「ねぇ……。雄治が要らないのなら、その手拭い、私がもらってもいい?」



 突然の申し出に私は驚く。



 「あ……。よろしければどうぞ。使ってください」



 本当は、利勝さまに使ってもらいたいけど。

 でも、受け取ってもらえないのなら。
 私が持つより、せめてさき子さまに使ってもらいたい。

 さき子さまは喜んだ。



 「あら!じゃあ、私がもらっちゃっていいのね?
 それじゃあ、遠慮なく……」



 そうおっしゃって手を伸ばすさき子さまより先に、
 利勝さまの手が、その藍色を掴んだ。


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