この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 「このあいだのお使い。お前は皆に心配をかけたことで、ひどく落ち込んでいたのに……。

 お前は生まれついた時から足が悪く、そのせいか内気な性格で、外にも出ず、いつも部屋でひとり過ごしていたわね。

 でも この林の家に来て、八十治さんと出会ってからお前は変わったわ。とても明るくなった」



 母さまはふんわりと優しく包むように微笑んで下さる。


 言われて私も、林の家に来た頃のことを思い起こす。



 ………それは兄さまが、私の足を見ても、笑わなかったから。
 馬鹿にしたり、憐れんだりしなかったから。


 でもいつも、そっと気にかけてくれる優しさをくれたから。


 だから 私は、兄さまが 大好きになった。


 思い返す私を優しく見守りながら、母さまはそのお顔に、少しいたずらっぽい笑みを含ませる。



 「そして今、お前は自分から新しい一歩を踏み出そうとしている。
 その勇気をくれたのも、やはり八十治さんなのかしら?」


 「それは……」



 それは、ちがうの。


 それは――――利勝さま。



< 46 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop