魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
上空から主に山脈など隠れやすい場所を捜していたグラースとドラちゃんは、結局何の成果もなく今夜の宿になりそうな街を見つけると、郊外の森の中でドラちゃんを人型にさせた。


「もう1ケ月以上経った…。ラスは…生きていると思うか?」


「生きている。だがどこに居るかはわからない」


「どうしてそう断言できる?不死だから死なないとは思うが…相手は悪魔だろう?」


「何かしらの魔法をかけられた可能性はあるが、死んでいない。ベイビィちゃんの匂いがどこかからする。俺は絶対この匂いを忘れない」


凛々しく少し野性的で端正な美貌はにこりともせず、またグラースもほとんど笑うことはないのではたから見ると2人が怒っているように見えるかもしれないが、別に怒ってはいない。

何しろグラースもドラちゃんも背が高くてお似合いの恋人同士に見えるので、宿にも疑われることなく難なく泊まることができたが――だんだん焦りも感じてきていた。


「魔王はまだベイビィちゃんを見つけていないのか…。それで魔王と言えるのか」


「何百年も生きているとはいえ、あのゼブルという男はそれ以上に生きている男だろう?私は悪魔に対抗できるのはオーディンだと思う。ラスたちよりオーディンを捜すべきじゃないのか?」


部屋に入るとベッドはひとつだけ。

てっきりふたつあるものと思っていたので一瞬脚が止まったが、ドラちゃんは何ら構うことなく最初にベッドに腰掛けて欠伸をしている。

グラースは一通り部屋を見て回って安全だと確認すると、その場で鎧やシャツなどを脱ぎ捨てて裸になり、バスルームへと消えて行った。


――ドラちゃんはドラゴン族の中でも古代種と分類された知性あるドラゴンだ。

故にモテたし、精霊界には子供も何匹か存在するが…特定の雌とつがったことはない。

ドラゴンとは、そういう生き物なのだ。

人はドラゴンよりも弱くて脆いので雌として意識したことはないし、ずっと飛んでいたので少し眠たくなってうとうとしていると、ベッドが軋んで腰に手が回ってきた。


「…寂しくないか?」


「何の話だ。ベイビィちゃんに触ってもらえずに寂しいのは確かだが」


「ラスの代わりに私がお前を慰めてやってもいい」


肩越しにちらりとグラースを見たドラちゃんは、グラースが何も着ずに裸であるのを確認すると寝返りを打って真向かいになる。

…人にしては顔も身体も美しくて、興奮しないというわけではないし、子を作ればラスに可愛がってもらえるだろうしもっと絆が強くなるかもしれない――

打算が働き、グラースの顎を掴むと荒々しく唇を奪った。
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