魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「あの山なんだが…やっぱり何かおかしい。頂上まで丸1日かかるが行ってみないか」


「そうだな、ここ数か月山から動物たちが降りてきて村の方をじっと見ているんだ。追いかけると山の方へ逃げて行くんだが…立ち止まって誘うようにこっちを見ているし…。近付くとまた山に逃げての繰り返しだし、勇士を募って行ってみよう」


今日は大きな鹿が村の付近に現れていた。

近くにはイノシシの親子も居て、ついて行くとまるで出迎えのように次々と動物たちが現れる。

不気味で今すぐ村に戻りたかった住人たちだったが、意を決してリュックサックに食料や水を詰め込むと、4人の男たちは動物たちを目印に早朝山を登り始めた。


この山は磁場が狂うので迷ってしまえば死ぬこともある。

故に山菜や美味しそうな動物が居ても森に逃げ込まれてしまえば追いかけるのは危険なので山に行かないのは暗黙のルールだったのだが――ここ数か月は異常なことが起こっているとしか思えなかった。


「何も無ければそれでいいし、こいつらを狩って土産にしよう。…なんなんだこいつらは」


山道の脇にはウサギや鳥、豚や蛇、鹿や猿など、ありとあらゆる動物が熱烈な歓迎でもするように並んで座っていた。

…銃は持ってきたがなんだか怖くて殺すことができず、最近村長となった白髪まじりの男は首を傾げつつも何度か途中休憩を挟んでとうとう――山を登り切った。


「ここが頂上か…はじめて見たぞ。…おい、家があるぞ!」


とっぷりと陽が暮れてランタンに灯りを燈した村長は、木造で造られた小さな家を見つけて声を上げた。

家の回りには動物たちが集結し、ランタンの灯りを受けてあちこちで目が光っているので恐怖を感じつつも、真っ暗な家に近付いてドアを叩いた。


「すみません、誰か住んでいるんですか?ここを開けて下さい」


しんと静まり返った家。

村長は勇気を振り絞ってドアノブに手をかけて回してみると…開いた。

男たちは顔を見合わせて頷くと、村長を筆頭に室内へと脚を踏み入れる。


「誰か居ませ………おい、老人が居るぞ!大丈夫ですか!」


ベッドには、息も絶え絶えの状態に見える女性の老人が横たわっていた。

左手の薬指には既婚と思しきマリッジリングと、ガーネットの石が嵌められたリング――


目を開けたが声は出ず、村長たちはあちこちにランタンを置いて室内を明るくすると、老婆を…ラスを抱き起こした。

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