魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスと数か月も離れて暮らすことになるなんて――

常に自信に溢れて自らの力を疑っていないコハクでさえも、あまりの情報の無さに心が折れかけていた時…ふと気になることが目に付いた。

いつも宿屋に宿泊する時、テーブルに地図を広げて訪れた箇所に印をつけているのだが…

ルゥはいつも南西の方をじっと見ているような気がしていた。


まさかと思って地図を逆さまにしてみると…やっぱり南西の方を見ている。

ベッドに寝転がっていたコハクはルゥを抱き起してテーブルに乗せると、小さな手を握って頬にキスをした。


「ルゥ…ママがどこに居るか分かるか?…俺はさっぱりわかんねえんだ。チビのことは全部わかってるつもりなのに…どこにいるか全然分からねえ…。ルゥ、もしわかるのならこの指で指してみてくれ」


「あぷ」


もう掴まり立ちしなくても立てるようになったルゥは、四つん這いになると人差し指で南西のとある村を指した。

その付近には村がひとつしか記されていないので、コハクは目を丸くしてルゥの真っ赤な瞳を覗き込む。


「……ここか?」


「まー。まー!まー!」


“ママが、ここに居る”。

ルゥがそう言っているような気がしたコハクは、もう為す術もなくいちかばちかで訪れてみようと決めて、ルゥを抱きしめた。

…いつもはラスが添い寝して寝かしつけていたので、今でもルゥは夜泣きをする。

ラスが恋しくて泣いているルゥをあやしているうちに、自分もまた泣きそうになってしまってシャツの袖で目じりを拭うこともある。


だがそれも…これで終わりだろうか?

いや、終わりにしたい。


「朝になったらすぐ出発しよう。ルゥ…ママがこの村に居るといいな。見つけたら俺……なんでもねえよ、もう寝ろ」


額に手をあてて魔法をかけるとルゥはあっという間に寝てしまい、コハクはルゥが立てるようになったことや、会えたら思いきり抱きしめて数えきれないほどキスをしようと想像をして幸せな気分になると、無理矢理瞳を閉じて自己暗示をかけて眠りにつく。


――その頃ゼブルは魔界でデスに昼夜問わず追いかけられて攻撃をされて、命からがらの状態で逃げ回っていた。

ゼブルを殺す、と決めたデスは――コハク以上に恐ろしい存在になっていた。
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