魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
村に戻った村長たちは、山頂の小さな山に老婆が住んでいたことを住人達に明かして会議をしていた。

どうやって山から下ろすか、医者は呼んだ方がいいのか、ここに住まわせて世話をしてやろうかなど様々な議題が持ち上がり、とりあえずは山から下ろすのが先決だと言うことで話がまとまり、村長らはとてもよく馴れた馬を連れて再び山頂を目指すことにした。


「俺が一緒に乗って支えてやりながら下りる。こいつはあまり揺れないし早く下りれるだろう。さあ行こうか」


自分たちを見た時、とても嬉しそうに笑った顔――

言葉は交わせなかったけれど、長い間独りであの家で暮らして来たのではないかと思わせるほどに人恋しがっていた風だった。

誰も世話を申し出ないのであれば自分が世話をしてやろう、と密かに決意していた村長が馬に乗ろうとした時――


「捜している女が居るんだ。知らないか」


「!おや…?旅人ですか?こんな辺境に珍しい…」


――真っ黒なマントに身を包んだ黒髪で赤い瞳の男…コハクが広場に集まっていた村長に声をかけると、村長は差し出された肖像画を見て首を振った。



「いや、こんな綺麗な女性は来ていないが。すまないが我々は少し急いでいるんだ。他の住人たちにも聞いてみてくれ」


「どうした?問題でも起こったのか?」


「いやなに、旅人さんには関係ないことなんだがね。あの山の上に老婆が居てね、今から迎えに行ってやるところなんだ。もう80~90歳位だと思うんだが…そういえば金髪と緑の瞳っていうのは肖像画と同じだね」


「…そっか。今から行くのか?どうやって?」



コハクは彼らが用意していた馬たち1頭1頭と目を合わせて、真っ赤な瞳で恐怖感を与えた。

恐慌状態に陥った馬たちが突然嘶いて暴れ回り、手綱を振り切って方々逃げて行ってしまい、慌てた男たちは馬を連れ戻すために村や村の外へと飛び出て行く。


「な、なんだ、一体何が起きたんだ!?」


コハクはくるりと背を向けて村を出ると、あちこちで見かける動物たちがじっとこちらを見て山へと誘導したがっている様子に確信を得た。


「こんなの…チビにしかできねえ。やっぱチビはすげえな」


マントの中でコハクの腕に抱かれていたルゥが顔を出して山の上に向けて手を伸ばす。


「マー!マー!」


もう、間違いない。

ラスは…あの山に居る。
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