魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
閉めようとしていたドアが再び勢いよく開くと、コハクの冷徹に見える美貌は――明らかに怒っていた。



「嘘をつくなよ」


「…………」


「知ってんだろが。正直に言えよ。婆さん…いや、お前……チビだろ…?」



ラスの小さな瞳が見開かれると、コハクは両膝をついて震えるラスの両手を握って笑いかけた。


「すげえ変わってたからびっくりした。ここを見つけたのは俺じゃなくてルゥなんだぜ。びっくりしたけど…この瞳の色も髪の色も…このリングも、忘れるわけがねえ。お前はチビだ」


「マー!マー!」


細長くて綺麗な指でリングをなぞられると、ラスの瞳からもうずっと溢れることのなかった涙が一筋伝った。

そしてコハクは――ラスをこんな姿にして苦しめたゼブルに例え様のない殺意を抱き、立ち上がってラスを抱きしめた。


「妙な魔法をかけられたんだな。チビ…待たせたな、つらかったろ?すぐに見つけ出せなくてごめん」


「……ぉ……ぁ……ぅ…」


「ん。寂しかったよな。つらかったよな。苦しかったよな。でももう大丈夫だから。見つけたからにはかけられた魔法を解く方法をすぐ探す。な、チビ…グリーンリバーに帰ろう」


それはいやだ、と思った。

コハクにこの姿を見られること自体抵抗があるのに、ましてやデスやグラースに見られるなんて…恥ずかしいし、身体の節々が痛くて移動には耐えられそうにもない。


皺らだけのラスの顔に拒絶の色を読み取ったコハクは、一旦外へ出ると掌を地面に翳して魔法陣を描き、ケルベロスを召喚した。


『わー、魔王様ー』


「魔界に行ってデスを捜して来い。あいつのことだからゼブルを追いつめてるはずだ。俺が塵になるまであいつの全てを破壊する。そしてチビにかけられた魔法を解く」


『え…この婆さんはチビなの!?チビー、美味しそうだったのに食べるとこがすっかりなくなっちゃって…』


「いいから早く行け。協力できそうなことがあればデスを助けてやれ」


『はーい』


コハクは少しでも力を籠めれば折れてしまいそうなラスの身体をそっと抱き上げてベッドに寝かせて手を握ってやった。


「チビが歳を取るとこうなるのかあ。…うんうん、イケる。チビだと思ったら俄然イケる!」


ヘンタイなのは相変わらずで、思わず笑みが零れた。
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