魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
食事後、グリーンリバーに居なかったはずの動物集団がラスを囲んできゃっきゃっしている光景を木陰でのんびり眺めていたコハクは、オーディンたちを呼び寄せて今までの出来事を詳細に語った。


話が進むにつれてローズマリーの顔は曇り、オーディンは眉を潜め、デスは…無表情のまま。

最も衝撃を受けていたのはローズマリーで、両手で口元を覆いながら大きなため息をついた。


「そんな抜け穴みたいな魔法があるなんて…」


「あなたは博識だし賢者として名を馳せてはいますが、あくまで“人の中で”の話です。魔法は無限にあり、恐ろしい威力を発揮する魔法を知っている者も多い。まあ、私もそのうちのひとりですが」


「とにかくチビは筆舌に耐えがたい苦しみを味わった。ルゥが教えてくれなけりゃ…俺が発見した時は骨だけになっても生きていて、喋れないチビになってたかもと思うと…」


もう終わったことだったが、“もしも”を想像してみたコハクは戦慄を覚えて大きな手で額を押さえる。

するとラスと遊んでいたルゥがよちよち歩いて来てコハクの膝に上がると、少しラスに似た笑顔でころんと膝に寝転がった。


「ぱー。ぱー」


「お前はまだちっせえけど立派な勇者だぞー。お姫様を助けたんだぞー」


「きゃっきゃっ」


コハクによく懐き、またよく笑うルゥ。

のどかな光景ではあるが、コハクが言わんとしていることはその場に居る全員がわかっている。


また同じような目に遭うかもしれない――


それを阻止するために呼び集められたのだと、知っている。


「あなた自身は危険な目に遭ってもいいというの?」


「俺が何年生きてると思ってんだ?まあこの中では俺が1番年下かもしんねえけど、チビは不死だが魔法は使えねえ。身を守る術がねえ。だから俺が盾になるんだ、当然だろ」


「あなたばかりが盾になる必要はありません。ゼブルは少々やりすぎましたね、あなたに心酔する気持ちはわからないでもありませんが…ゼブルクラスの悪魔であれば魔界にはまだ沢山居ます。…少々脅しておきますか?」


コハクは木の幹から身体を起こして駆け寄ってきたラスにルゥを預けると、ラスがその場を去るまで話の内容を聞かれないために紅茶を口に運ぶ。

そしてラスが去ると――


「…一応考えがある。オーディンとデスは俺の言う通りに動け」


「仰せのままに」


「………わかった…」


ラスを守るために――
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