魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
魔法陣を使って戻って来たので全くといっていいほどの手ぶら状態なオーディンとローズマリーだったが――
コハクたちの部屋に行く前に、当面滞在する部屋を割り当てられた時にあちこち見て回っていたローズマリーの細い身体をふわっと抱きしめた。
「いきなり何?どうしたの?」
「…あなたは神に会いたいと思ったことはありませんか」
「ないわね。私は不死の法を見つけてしまって生の理を捻じ曲げた者だから、神なんかに会ったら地獄に突き落とされてしまうわ。不死だから永遠に地獄をさ迷うのよ。絶対会いたくなんかないわ」
珍しくスキンシップを求めてきたオーディンを見上げたローズマリーは、いつも微笑を湛えているやわらかい美貌に少しだけ怒りを滲ませているように見えたので、体勢を入れ替えて真向かいになってオーディンを抱きしめた。
「どうしたの、あなたらしくない顔をしているわ」
「…私も知識を手に入れるために様々なものを犠牲にしてきた。神にお会いしたこともあります。あなたのように人々に尽くした方を救ってもいいのではないかと思うんです」
「そうね、でもそれは全ての魔法使いの使命だったわ。コハクを拾ってから彼がとても優秀だったからもっと人のために尽くすことができたけれど…今は私は何をしてるのかしら。よくわからないわ」
――ローズマリーの美しい唇からは、最近“コハク”という単語は一切出てこなかった。
ラスを伴ったコハクが突然現れてから結婚するまで…その間に様々な葛藤と戦っていたローズマリーと出会い、惹かれて狭い世界から連れ出したのは自分。
病を患っている彼女はこれからも永遠に治らない病と戦わなければならない。
彼女は常に、何かと戦っているのだ。
「神は無慈悲な方ではありません。…いつか私があなたと神を引き合わせます。ラス様の元に神の使いの天使が現れたのだから、奇跡が遠のいたわけではない」
「私のためにありがとう。でもいいのよ、私は現状に満足しているわ。コハクも幸せになれたし、私だって…あなたと一緒に居れて幸せよ」
…嘘だ。
そう口を突いて出そうになったオーディンは、顔を寄せて額にキスをすると、ベッドに腰掛けてローズマリーを膝に乗せて抱きしめる。
はじめて好きになった人。
長年をかけてコハクの影を追い払う覚悟でキスをねだった。
コハクたちの部屋に行く前に、当面滞在する部屋を割り当てられた時にあちこち見て回っていたローズマリーの細い身体をふわっと抱きしめた。
「いきなり何?どうしたの?」
「…あなたは神に会いたいと思ったことはありませんか」
「ないわね。私は不死の法を見つけてしまって生の理を捻じ曲げた者だから、神なんかに会ったら地獄に突き落とされてしまうわ。不死だから永遠に地獄をさ迷うのよ。絶対会いたくなんかないわ」
珍しくスキンシップを求めてきたオーディンを見上げたローズマリーは、いつも微笑を湛えているやわらかい美貌に少しだけ怒りを滲ませているように見えたので、体勢を入れ替えて真向かいになってオーディンを抱きしめた。
「どうしたの、あなたらしくない顔をしているわ」
「…私も知識を手に入れるために様々なものを犠牲にしてきた。神にお会いしたこともあります。あなたのように人々に尽くした方を救ってもいいのではないかと思うんです」
「そうね、でもそれは全ての魔法使いの使命だったわ。コハクを拾ってから彼がとても優秀だったからもっと人のために尽くすことができたけれど…今は私は何をしてるのかしら。よくわからないわ」
――ローズマリーの美しい唇からは、最近“コハク”という単語は一切出てこなかった。
ラスを伴ったコハクが突然現れてから結婚するまで…その間に様々な葛藤と戦っていたローズマリーと出会い、惹かれて狭い世界から連れ出したのは自分。
病を患っている彼女はこれからも永遠に治らない病と戦わなければならない。
彼女は常に、何かと戦っているのだ。
「神は無慈悲な方ではありません。…いつか私があなたと神を引き合わせます。ラス様の元に神の使いの天使が現れたのだから、奇跡が遠のいたわけではない」
「私のためにありがとう。でもいいのよ、私は現状に満足しているわ。コハクも幸せになれたし、私だって…あなたと一緒に居れて幸せよ」
…嘘だ。
そう口を突いて出そうになったオーディンは、顔を寄せて額にキスをすると、ベッドに腰掛けてローズマリーを膝に乗せて抱きしめる。
はじめて好きになった人。
長年をかけてコハクの影を追い払う覚悟でキスをねだった。