魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
その夜は、久々での大人数のディナーとなった。

臥せってからはじめて食卓の間で食事をしたラスの隣はもちろんコハクで、ラスが沢山食べれるようにとコハクの膝にはルゥが乗せられて食事の世話をしていた。


「やっぱりみんなでご飯を食べるのは楽しいねっ。旅をしてた時のこと思い出すし」


「そだな。そういや小僧たちとカイも近々会いに来るって言ってたから、2番目ができたこと報告しろよ」


ラスがとびきり大きく目を見開いてスプーンを置くと、コハクに身を乗り出す。


「え?もうコーが伝えてくれてたと思ってたんだけど…」


「チビが自分で言いたいかなーって思って言ってねえんだ。な、びっくりさせようぜ」


「うんっ」


――ラスは変わらない。

外見はもちろん数年を経て成長したが、中身はコハクが愛する無邪気で可憐で、そして鈍感なままなのだろう。

ローズマリーはそうしてラスを時々観察していたが、オーディンはグラースの腹に注目していた。


「まさかドラゴンの子をね…」


「おかしいか?本来は卵で産まれてくるらしいが、雌が人の場合は人型で産まれてくるらしい。例外もあるようだが」


「そだよグラースとドラちゃんの赤ちゃんと同い年になるんだよね!仲良しになるといいね」


にこにこしているラスの隣…コハクの反対側にはデスが陣取り、ものすごい速さでデスの回りから料理がなくなっていく。

だが意地汚い食べ方ではなく普通に食べているように見えて量が消えているのでローズマリーが呆れていると、コハクはラスの肩を抱いて頬にキスをして言い聞かせた。


「今夜オーディンたちとちょっと話があるから先に寝てろよ。部屋には結界を張っておくし、デスにも見張らせておくからさ」


「うん、わかった。早く終わったら早く帰って来てね」


「ん、わかった」


ラスの唇の端についたソースをぺろぺろ舐めて笑い声を上げさせたコハクの深意は綺麗に隠されている。

ラスには見せたくないものが沢山ある――


誰もがそれを強く理解していたが、元々過保護なコハクの庇護欲はさらに凝り固まってラスをがんじがらめにしていたが――ラスはそれを苦痛にも感じていないようだった。

時々邪険にされているようだが、それも愛嬌。

オーディンとローズマリーは顔を見合わせて、いつものふたりの様子に苦笑した。
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