魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
コハクが何やら小難しい話をしている。

それも自分には聞こえないようにひそひそ話しているので、絶対に自分に関わりのある話だとラスは気付いていた。

気付いていたが、コハクのことだからきっと…自分のためなのだろう。


男に襲われそうになって…心が壊れる寸前だった自分をどうにか救ってくれようと奮闘してくれているのだろう。


「ねえコー、紅茶淹れて来てあげよっか。あとクッキーとかスコーンとか焼いてくるからみんなでお茶しよ」


「ああ、サンキュ。火傷したりすんなよな、せっかく真っ白な肌で綺麗なんだからちゃんと手袋して…」


「うん、わかった。じゃあ行って来るね。グラース、ついて来てくれる?」


「ああ」


つわり中のグラースは現在クッキーなど甘いものに目がなく、そして自分がひとりで行動するとコハクが心配して結局ついて来てしまうことも知っているので、グラースに引率をお願いして部屋を出る。


「ドラちゃんずっと庭で寝てるけど、一緒に居なくていいの?」


「別にいい。私は種をもらっただけだからな」


「種??ドラちゃんに種があったの?どこに?」


「それは後で魔王に教えてもらうといい」


ふうんと言って手をぶんぶん振り回してくるラスの手をしっかり握ったグラースは、コハクを含めほぼ人外と言える彼らが額を突き合せてラスに関わる重要な話をしていることにも気付いていた。

この世界の話ならば、剣にも腕があるし何か協力ができるのだが…今は身重だし、逆に荷物になりかねない。


「コーたちが私に内緒で大切な話をしてるみたいなの。危ないことなら止めないとと思うんだけど…」


「あんな化け物みたいな連中が揃っていて危ないわけがない。身の危険という意味ならあいつらじゃなく、あいつらを敵にする奴らを心配した方がいい」


「…私が…危ない目に遭ったから?」


キッチンに着くと、コハク推奨のハート形のエプロンをつけて準備に入ったラスの傍に椅子を引き寄せて座ったグラースは、当然だと言って頬杖を突いた。


「魔王はお前のためなら何でもすることは百も承知だろうが、今は好きにさせてやった方がいい。お前のためにと必死に考えて出した結果だろうから」


「うん…わかった」


大好きなグラースに頭を撫でてもらってご機嫌になったラスは、腕まくりをしてクッキー作りに精を出した。
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