魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
コハクからすべての作戦を聞いたデスは、骨だけの両手を見つめてゆっくり頷いた。


「……じゃあ……明日…やる…」


「ああそだな、早めにやっつけとこう。お前が乗り気なんて珍しいな。俺は…お前の故郷をどうにかしようとしてんだぞ」


いつどこで生まれたのかもわからないし、ただあそこで生きるのが普通だったから…疑問に思ったことがない。

故郷と呼ぶには郷愁もないし、最初は眩しい世界だと思っていた地上も今となっては――


「………壊すんじゃ…なくて…閉じ込める…」


「そ。ただ歯向かってきたら殺す。その他諸々やんなきゃいけねえことはあるんだけど、それは全部俺がやる。お前とオーディンは最後の時だけ力を貸してくれればいい」


「……ラスには……」


「話してねえよ。お前が俺と同じ立場だったら話せるか?悩ませるだけだろうが」


天真爛漫なラスが思い悩む姿は想像できない。

最近はずっと生きている死体のような有様だったので、ラスにはいつの時でも笑っていてほしいと願う気持ちは――コハクと何ら変わらない。


じっと見つめてくる真っ赤な瞳を見つめ返していると、急に厳しい光がふっと和らいで頭をぐりぐり撫でられた。


「そういうことだから俺は話してねえんだ。お前もさあ、チビに惚れてんなら言っていいことと悪いことの区別をしっかり勉強しとけよ。もしチビを怒らせて離れて行かれたらどうだ?想像できるか?」


――自分がラスを怒らせて…離れて行かれる?

それを全く想像できなかったし、またラスに怒られる想像も全くできなかったデスは、それでもなんだか不安な気分になって膝を抱えて床に座り込んでしまった。

コハクはそんなデスの前で中腰になると、ぽんぽんと頭を叩いてベッドに腰掛ける。


「お前もだんだん色んな感情が芽生えてきていい感じになってきた。チビを守るために協力してくれて助かるし、これからも傍に居てやってほしいんだ。な?」


「………わかった……」


「よーっし。じゃあ辛気臭え顔してチビに心配かけんなよ。あ、間違えた。お前はいっつも辛気臭え顔してるもんな」


…コハクにからかわれると、なんだか嬉しくなる。

頭に乗っている手をゆっくり振り払いつつにまっとしてしまったデスは、クッキーとスコーンの匂いが近付いて来て機敏に立ち上がった。
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