魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスは自分がここから逃げ出した時と何ら変わっていない。
一旦解散していたが、お茶会に呼ばれてコハクとラスの部屋を訪れたローズマリーは、コハクが本当にラスに不死の魔法をかけて永遠に傍に置いたことを純粋に羨ましいと思った。
不死の魔法を発見した時は、自分が実験台になるのは当然のこと。
そしてそれが成功してしまい、弟子でもあったコハクにそれを託すのも、当然のこと。
誰かに使ったりするのは自由だと言ったものの、コハクが本当に使うとは実は思っていなかった。
コハクにはなにかとてつもなく大切なものが欠如していて、全てを捨ててまで愛する何かが見つかるとは思っていなかったから。
だが今目の前で、コハクの最も大切なものは――さらに最も大切なものを産んで、ソファで転げまわっていた。
「ちょ、ルゥちゃんばたばたしないの!お着替えしようね」
「あうぅ、まー。きゃぅっ」
「こーら、ルゥ!ママの言うこと聞いてちょっとだけじっとしてろって」
ひとつの家族の光景。
憧れて…何ひとつ手に入れることができなかった光景を冷めた目で見ていたローズマリーの肩をそっと抱いたのは、ただただ少しだけ口角を上げて笑っていたオーディンだった。
「物欲しそうな目をしていますね」
「愛する人…子供…家族……家族って何だったかしら。…正直に言うわ。私…羨ましいのよ。でも愛する人を見つけたって先に死んでいく…。それがいやで、人との関わりを絶って生きてきたわ」
「けれど、コハク様に不死の魔法をかけて共に暮らしてきた。…愛してしまったんですね」
コハクがラスの手伝いをしている間に、窓辺に立って紅茶を飲んでいたローズマリーの肩を抱いて複雑そうな表情のパートナーの顔を覗き込んだ。
だがローズマリーは努めて平静を装って肩に乗っていたオーディンの手を払うと、肩で息をつく。
「コハク様は魅力的な方だ。あなたの心中はわからないでもありませんが、私で諦めて下さい。あなたの望みと私の望みがいつか叶うように…共に生きていきましょう」
「あなたの願いって…なに?聞いたことないけど」
「口にすると叶わなくなるので秘密です」
「へえ、人間的なことを言うのね。わかったわよ」
――あなたと家族を持ちたい。
その願いは、心の中で。
一旦解散していたが、お茶会に呼ばれてコハクとラスの部屋を訪れたローズマリーは、コハクが本当にラスに不死の魔法をかけて永遠に傍に置いたことを純粋に羨ましいと思った。
不死の魔法を発見した時は、自分が実験台になるのは当然のこと。
そしてそれが成功してしまい、弟子でもあったコハクにそれを託すのも、当然のこと。
誰かに使ったりするのは自由だと言ったものの、コハクが本当に使うとは実は思っていなかった。
コハクにはなにかとてつもなく大切なものが欠如していて、全てを捨ててまで愛する何かが見つかるとは思っていなかったから。
だが今目の前で、コハクの最も大切なものは――さらに最も大切なものを産んで、ソファで転げまわっていた。
「ちょ、ルゥちゃんばたばたしないの!お着替えしようね」
「あうぅ、まー。きゃぅっ」
「こーら、ルゥ!ママの言うこと聞いてちょっとだけじっとしてろって」
ひとつの家族の光景。
憧れて…何ひとつ手に入れることができなかった光景を冷めた目で見ていたローズマリーの肩をそっと抱いたのは、ただただ少しだけ口角を上げて笑っていたオーディンだった。
「物欲しそうな目をしていますね」
「愛する人…子供…家族……家族って何だったかしら。…正直に言うわ。私…羨ましいのよ。でも愛する人を見つけたって先に死んでいく…。それがいやで、人との関わりを絶って生きてきたわ」
「けれど、コハク様に不死の魔法をかけて共に暮らしてきた。…愛してしまったんですね」
コハクがラスの手伝いをしている間に、窓辺に立って紅茶を飲んでいたローズマリーの肩を抱いて複雑そうな表情のパートナーの顔を覗き込んだ。
だがローズマリーは努めて平静を装って肩に乗っていたオーディンの手を払うと、肩で息をつく。
「コハク様は魅力的な方だ。あなたの心中はわからないでもありませんが、私で諦めて下さい。あなたの望みと私の望みがいつか叶うように…共に生きていきましょう」
「あなたの願いって…なに?聞いたことないけど」
「口にすると叶わなくなるので秘密です」
「へえ、人間的なことを言うのね。わかったわよ」
――あなたと家族を持ちたい。
その願いは、心の中で。