魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
…コハクの顔からにやけ笑いが止まらない。


オーディンとデスはコハクとラスの部屋を訪れてそんな色ぼけ魔王を見るなり顔を見合わせて、呆れた息をついた。


「昨晩はさぞお楽しみだったようで?」


「だってさあ、チビから誘われたんだから断れねえだろ。ふふふふ…かーわいかったなあ…ふふふふふ…」


「……魔王……気持ち悪い…」


「うっせ。チビ、腹が冷えねえようにするんだぞ。行ってくっからな」


ぐっすり眠っているラスからは返事がなく、遅れて部屋にやってきたローズマリーとグラースが部屋に入ると、肌に静電気のようなものがぴりっと走って部屋を見回した。


「部屋に結界を張ってある。かなり強力なやつだし、あとこの部屋に入れんのは小僧とボインだけだ。食料も運び込んでおいたし、俺たちが帰って来るまではここから出るなよ」


「わかったわ。あなたは相変わらず過保護で心配性ね」


「オーディン、お師匠の持病の薬をあるだけ持って来い。…すぐ帰って来るつもりだけど何が起こるか分かんねえからな」


「はいはい、もちろん用意済みですよ。ローズマリー、これをどうぞ」


「ありがとう。何も起こらないことを祈っているわ」


オーディンがローズマリーの瞼にちゅっとキスをする。

何故か目を逸らさなければいけないと思ったコハクが寝返りを打ったラスの肩まで布団をかけ直してやると、部屋の真ん中で赤い光が輝いた。

コハクが振り返り、それが魔界へ通じる魔法陣であることを確認してからラスの頭にキスをして、まずその魔法陣に脚を踏み入れた。


「俺の目的は魔界の連中の殲滅じゃねえ。出て来れねえようにするだけだ。余計な殺しはすんな」


「わかっていますとも。私が動く時は同レベルの者とぶつかり合う時です。例えばあなたとか」


「挑発したって乗らねえからな。デス、お前もわかってんだろうな?」


ラスをじっと見つめていたデスは、ゆっくり頷いて骨の指を隠していた手袋を外した。

死神は魔界でも特異な存在だ。

たったひとりの死神で、誰とも接することなく生きてきた死神が、再び魔界に舞い降りる。

恐らくデスの存在だけでかなりの効果があるだろうが――オーディンとコハクが加われば鬼に金棒。


「じゃあ行って来る。チビー、大人しくしてろよー。ルゥ、ママを頼んだぞ」


「あいぃー」


3人が魔法陣の上に立ち、瞬時に姿が溶けて消えた。
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