魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
こんな荒廃した世界が存在していいのだろうか。
コハクは魔界を訪れる度にそう思い、またデスと出会わなければこんな考えを持つこともなかったであろうことを認識して、無表情のデスの肩を抱いた。
「お前が魔界でゼブルを追っかけ回してたんだろ?だからあいつはなかなかチビに手を出せなかった」
「……すばしこかった…」
「執念って怖ぇよな。チビにゃなんも関係ねえのに。…で?城が建とうとしてんだって?」
コハクたちが立っている場所は魔界で最も大きな街のすぐ傍のほぼ立ち枯れた森の中で、辺りにはほぼ骸骨の獣や、むしろ骨だけの人型の魔物がうろついている。
だが彼らは本能で立ち向かっても勝てない相手に向かっていくのは馬鹿のやることだと知っているのでコハクたちには近付いてこない。
「……魔王城……作るって…言ってた……」
「ふうん」
赤い瞳を細めて街の方を見たコハクは、まるでこの世界の象徴のように突出して高い城だ。
歪んだ世界に似合わない緩やかな曲線を描いた優雅な仕様で、内部は恐らく華美なほどに優美なものだろう。
何故ならば、それがゼブルの趣味だから。
「あれかー。もう出来上がってんじゃねえか。ってことは…ここの連中はゼブルが死んだことを知らねえってことだな」
「そうなるでしょうね。いいじゃないですか、あの城を見学しつつ、あそこでやりましょう」
「いいねえ、俺派手なの好き。じゃあ行きますかー」
ケルベロスを呼び出すこともなく、ぷらぷらと徒歩で街へ向かったコハクの両脇には自然とオーディンとデスが固めた。
彼らにとってはコハクは憧憬や尊敬の対象であり、彼を失うと様々な弊害や障害が起きることを知っているので、失うわけにはいかないのだ。
コハクの力を疑っているわけではないが、彼の力になれるならば…
「しっかしまあ…よくもこんな馬鹿でけえ城を作ったもんだな。そんなに俺を本物の魔王に仕立てたいってわけか?」
「あなたは本物の魔王ですよ。あなたも好んでそう名乗っていたじゃないですか」
「だって強そうじゃん」
にかっと笑ったコハクに笑みを誘われたオーディンは、街に一歩入るなりそれまで往来に大勢の魔物が闊歩していたのに、人垣が割れて息を呑んでこちらを見つめているのを見てほくそ笑んだ。
「あなたが望めば世界だって手に入るのに」
「んなのもう興味ねえよ。俺が興味あるのはチビだけー」
コハクは変わったが、悪い変化ではない。
角が取れていい感じになったコハクにまた興味を抱いたオーディンは杖を握り直して背筋を正した。
コハクは魔界を訪れる度にそう思い、またデスと出会わなければこんな考えを持つこともなかったであろうことを認識して、無表情のデスの肩を抱いた。
「お前が魔界でゼブルを追っかけ回してたんだろ?だからあいつはなかなかチビに手を出せなかった」
「……すばしこかった…」
「執念って怖ぇよな。チビにゃなんも関係ねえのに。…で?城が建とうとしてんだって?」
コハクたちが立っている場所は魔界で最も大きな街のすぐ傍のほぼ立ち枯れた森の中で、辺りにはほぼ骸骨の獣や、むしろ骨だけの人型の魔物がうろついている。
だが彼らは本能で立ち向かっても勝てない相手に向かっていくのは馬鹿のやることだと知っているのでコハクたちには近付いてこない。
「……魔王城……作るって…言ってた……」
「ふうん」
赤い瞳を細めて街の方を見たコハクは、まるでこの世界の象徴のように突出して高い城だ。
歪んだ世界に似合わない緩やかな曲線を描いた優雅な仕様で、内部は恐らく華美なほどに優美なものだろう。
何故ならば、それがゼブルの趣味だから。
「あれかー。もう出来上がってんじゃねえか。ってことは…ここの連中はゼブルが死んだことを知らねえってことだな」
「そうなるでしょうね。いいじゃないですか、あの城を見学しつつ、あそこでやりましょう」
「いいねえ、俺派手なの好き。じゃあ行きますかー」
ケルベロスを呼び出すこともなく、ぷらぷらと徒歩で街へ向かったコハクの両脇には自然とオーディンとデスが固めた。
彼らにとってはコハクは憧憬や尊敬の対象であり、彼を失うと様々な弊害や障害が起きることを知っているので、失うわけにはいかないのだ。
コハクの力を疑っているわけではないが、彼の力になれるならば…
「しっかしまあ…よくもこんな馬鹿でけえ城を作ったもんだな。そんなに俺を本物の魔王に仕立てたいってわけか?」
「あなたは本物の魔王ですよ。あなたも好んでそう名乗っていたじゃないですか」
「だって強そうじゃん」
にかっと笑ったコハクに笑みを誘われたオーディンは、街に一歩入るなりそれまで往来に大勢の魔物が闊歩していたのに、人垣が割れて息を呑んでこちらを見つめているのを見てほくそ笑んだ。
「あなたが望めば世界だって手に入るのに」
「んなのもう興味ねえよ。俺が興味あるのはチビだけー」
コハクは変わったが、悪い変化ではない。
角が取れていい感じになったコハクにまた興味を抱いたオーディンは杖を握り直して背筋を正した。