魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ゼブルが倒されたことを知らないまま城を建設してしまった悪魔たちは、コハクがやって来たことで凱旋してきたのだと思い込んで歓喜の声を上げた。


「コハク様が…!」


「人だが、もはや人を超越している力をお持ちだ。だから我々の王にふさわしい!」


「けっ」


ラスに誉められれば有頂天になって喜ぶコハクだが、他人に誉められて喜ぶことは滅多にない。

弱者は強者にこびへつらって生きていく――長年生きてきたコハクは目を逸らせない事実を身を持って何度も体験しているので、彼らの言葉に耳を貸すことはない。


「面白いほどに勘違いしていますね」


「襲ってこようもんなら返り討ちにしてやったとこだけどな。…あーあー、やっぱ城ん中もごってごてだな。あいつ趣味悪かったもんな」


やたら凝った装飾が壁にも天井にも彫り込まれてあり、べろべろと舌を出して気持ち悪いと表現するコハクの後ろを歩いていたデスは、さらに後ろを群れてついて来る大小強弱様々な悪魔たちを肩越しに振り返ってコハクのシャツを引っ張った。


「……ついて…来る…」


「いいって無視しとけ。俺たちがしようとしてることを実際見せりゃいいんだ。さてと…玉座はどこだ?どうせまたごってごてなんだろ」


城内はざわめきに包まれている。

ゼブルがコハクが魔王として魔界に君臨した暁には軍を統率して地上を攻めるために、ある程度の軍を作っていた。

彼のようにコハクに心酔している悪魔は多く、今のようについて歩いているだけでうっとしている者も居るくらいなのだが、コハク自身はそういった心酔者が居ることに優越感を感じたこともない。


コハクにとっては、ラスが全て。


「でっけえ扉だな。…あーここか。赤絨毯ながっ!どんだけ歩かせんだよ!」


「ゼブルはあなたを怒らせる天才ですねえ。こんなにも価値観が違うのにあなたに心酔していた。力とはそういうものです」


「あいつ面白くなかったし、俺が魔界に行く時は大抵デスをからかいにだったもんな。さ、いっちょやるぞー」


扉から一直線に伸びている赤絨毯の先には、城内と同じくごてごてに装飾された玉座。

コハクはそこで、彼らが息を呑む力を見せつける。
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