魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
数段の階段の上にある玉座には赤い宝石を中心にごてごての装飾が施されていて、一応それにどかっと座ってみたもののちっとも感慨深くもなく面白味もなかった。

座り心地もあまり良くなく、あくまで見た目重視の玉座に座って仏頂面のコハクの両サイドに並んだオーディンとデスは、ぞろぞろ列をなして部屋に入って来る大量の悪魔を眺めていた。


「多いですねえ。今から魔王としての即位式があるとでも思っているのでしょうか」


「まあ目撃者は多い方がいい。さ、やるぞ」


コハクが2人に声をかけると2人共頷き、コハクは長い脚を組んで見上げて来る悪魔たちに声をかけた。


「城の建設、ご苦労だったな」


「コハク様!コハク様!!」


「ゼブル様はどこに行ったんだ?あの方こそ功労者なのに…」


「ゼブルは俺が殺した」


あまりにもあっけらかんとコハクが告白したため、彼らは呆気に取られて顔を見合わせている。

オーディンは形を変えているグングニルの杖で大理石の床をごつごつと音を立てて叩いて我に返らせると、同じ言葉を繰り返した。


「ゼブルは、コハク様が殺しました」


「な…どうしてだ…?!」


ざわざわと声を上げて騒ぎ出したが襲ってくる気配がないのは――オーディンとデス、そしてコハクの恐ろしさを知っているからだ。

フードを目深に被って骨だけの手をだらりと下げたデスと、知識を引き換えに右目を捧げて全知を手に入れたオーディン――

そして人でありながら神に匹敵する魔力を誇るコハク。


対抗できるはずがない。


「俺さあ、あいつ嫌いだったんだ。俺の可愛い天使ちゃんを攫って怖がらせて、強姦しようとしやがった。許すわけねえだろ」


それまで薄ら笑いを浮かべていたコハクの表情が突如冷たく険しいものに一変したので、しんと静まり返る。

コハクは再びにかっと笑って玉座から立ち上がり、右手を腰にあてて左手の掌を赤絨毯が敷き詰められた床に翳した。


「ゼブルだけじゃねえ。お前たちはいつかゼブルのように俺の大切な家族を同じような目に遭わすかもしれねえ。俺はそうさせないように、ここに来た」


「そんな…!魔王として我々を率いて下さるのでは…!?」


挙がった声にコハクが爆笑した。

コハクは心から笑いながら、宣言した。


「率いるわけねえだろ。俺はこれからお前たちをこの世界に閉じこめに来たんだ」


場が凍り付く。
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