魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
為す術がないというのはこのことか――

元々地上に出ることのできる悪魔など一握りの存在で、コハクに閉じこめられる宣言をされた悪魔たちは、聖杯を飲み干したコハクと、彼を守護するオーディンとデスを見つめることしかできない。


地上に出るためには3人全てを倒さなければならない――

ましてや彼らは不死、もしくは不死ではないかもしれないが限りなくそれに近い存在で、推し量れないほどの魔力が身体中をたゆたっているのがわかる。

そしてコハクを中心にドーム状の金色の光があっという間に城を包み、そして魔界全体を包み込む。


「そんな…!地上に出ている同胞たちは…」


「心配すんなよ、俺がぶっ殺してやる。残念だったなあ、ゼブルの奴が俺の天使ちゃんを狙わなければ、俺もお前たちをある程度放っておいてやったのによ」


――コハクはかつて地上に増えすぎた魔物を間引きした経緯の持ち主だ。

すでに人と魔物は共生関係にあり、弱き魔物は放置して、強い魔物は劇的に数を減らして人の住む地域から追い出したことがある。

悪魔たちはそれを知っていたし、コハクの目につかないようにこそこそ生きてきた連中も居る。


だが今回は全員――コハクに目をつけられてしまったのだ。

ゼブルが起こした何かしらの行動によって。


「よっし、済んだぞー。あー疲れたー!チビに会いてぇえ!」


「もう戻れますよ。帰りの道中は私の魔法陣でどうぞ」


ごてごてに飾られた玉座に座ってみたもののその固さに辟易してすぐ立ち上がったコハクは、絶望に打ちひしがれている彼らに無邪気な笑みを向けて再び宣言。


「どうにかして地上に出てきたら…俺が熱烈に歓迎してやるからな」


オーディンが杖の先で魔法陣を描き、予想以上に深く切れてしまった親指をぺろぺろ舐めているデスを引っ張って魔法陣の上に乗ったコハクは、彼らに手を振って最後のお別れをした。


「じゃあなー。俺もうここには来ねえから。あ、デスも連れてくからなー」


したい放題やりたい放題の魔王が魔界を去って行く。


そして彼らは再び誰かを玉座に、など考えることのないように統制の取れていない弱肉強食の世界に戻っていった。
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