魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
強い強いとは思っていたが…腕は全く衰えていない。

鮮やかなまでの連携攻撃は長年コンビを組んでいたのではないかと思わせるほどに華麗で、ラスとティアラは手を取り合ってきゃっきゃと声を上げて喜んだ。

そうなると調子に乗ってしまう魔王は、腰が抜けて恐怖の眼差しで見上げてくるゴブリンを1匹捕獲すると、小さな身体を持ち上げて凶悪な笑みを向ける。


「どこを襲った?似合いもしねえネックレスつけやがって。まさか皆殺しにしたんじゃねえだろうな」


「み、皆殺しにはしてない!後で食おうと思って生け捕りに……」


「はーん、じゃあまだ手は出してねえんだな?よしわかった。お前は半殺しで済ませてやる」


それでもゴブリンにとっては全然嬉しくはなかったのだが、少なくとも殺される心配はなくなって安心したのか、ラスたちに舌なめずりをしたのでキレたコハクが首を絞め上げる。


「もう1度同じことしたら細切れにして鍋にしてそこのドラゴンたちに食わせるからな。ほら、方角はどっちだ?お前が先頭を行けよ」


「ひ、ひぃっ」


ドラゴンに乗ったゴブリンが先頭を歩き、逃げないようにとコハクとリロイが左右を歩いて進むうちに視界が開けてきた。

あちこちからもうもうと煙が上がっている村は今まさに襲われたばかりらしく、あちこちには恐らく見張りと思われる大量のゴブリンが歩き回っている。

そしてこちらに気付くなり大声を上げて、武器を手ににじり寄ってくると、こちらが生け捕りにしていたゴブリンが恐怖に戦いた声で牽制した。


「こ、攻撃するな!ここはもういい!引き上げるぞ!」


「なんだと!?せっかくご馳走が手に入ったのに…お前の後ろの奴らはなんだ!?」


「ただいまご紹介に預かりましたー、プリンセスたちと勇者様御一行でーす。ま、暴れるってんなら別にいいけど。殺しゃいいだけだしな」


冗談ではない声色にゴブリンたちが顔を見合わせる。

そしてコハクの隣に駆け寄ったラスは、抱っこしてもらうと頬にキスをしてコハクをでれでれさせながら彼らに笑いかけた。


「みんなを解放してくれたらなんにもしないから。ね?」


コハクだけでなくゴブリンたちもでれっとなる。


「…やっぱ皆殺しにしよっかな…」


どこまでも心の狭い魔王はそう呟いてラスを笑わせた。
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