魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
食料として捉えられた人間たちは、村の中央の広場に一か所に集められていた。


ラスとティアラが人々に駆け寄って助けに来たと言うと歓声が上がり、コハクは遠巻きにこちらを見つめているゴブリンたちに油断なく目を遣りながら剣を地面に刺して首をぽきぽき鳴らす。


「もうちょっと運動してえんだけどなー。ご馳走取られて悔しいだろ?そう思った奴らは行列作れよ。ひとりひとり…や、全員でもいいや。俺が相手してやっからよ」


「ひぃっ」


ゴブリンは群れで行動して、群れで獲物を襲う。

魔物は強い者には絶対服従なので、何やらどす黒いオーラを発しているコハクに恐れをなして誰も行列を作ろうなどとは思っていない。

怯えた目で見られるとぞくぞくしてしまうヘンタイ魔王がにやついていると、リロイが隣りに来てこそりと声をかけてきた。


「近くにゴブリンの巣があるんじゃないのか?殲滅した方が…」


「まあそれもいいけど、人と魔物はある程度共存してる。こいつらは脅威の存在ってわけでもねえし、俺はチビを早く妖精の森に連れて行ってやりたい。いつ体調が悪くなるかわかんねえだろ」


魔界に結界を張ったのでもうこれ以上悪さをする奴らは出て来ない、とは言わなかった。

別に伝えるつもりもないし、ラスだけに誉めてもらえればそれでいいので、誰もが偉業と言わざるを得ないことを口にせず、大型のリーダーらしきゴブリンの首根っこを掴まえて目線まで持ち上げた。


「そろそろ出て行けよ。いいか、また村を襲えば俺がねちっこく追いかけて皆殺しにしてやるからな。いいな?」


「ひぃっ!!は、はいっ!」


「コー、村人さんたちがお礼してくれるって。どうしよっか」


「あー、じゃあ食いもんだけもらっとくかー。あ、チビちょっと待て!俺が吟味すっから!」


コハクがラスを後ろから抱きしめると、ラスはコハクを見上げながらにこにこ笑って歓喜の声を上げている村人たちを指す。


「コーとリロイが助けたんだよ。ありがとう」


「俺だけでも十分だったんだけどさー。ま、たまには小僧にも花持たせてやんねえとな」


「ふふっ。コーは本当に優しいね」


――優しいと言ってくれるのは、ラスだけだ。

今までほとんどといっていいほど言われたことのない言葉を贈られて無性に照れたコハクは、脚に掴まり立ちしてくっついているルゥを抱っこして高い高いをしてやる。


「ルゥ、冒険は楽しいぞー!お前にもすぐわかる」


「だぁー」


冒険は、出会いを与えてくれる。

大切な人を、与えてくれる。
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