魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「お前はラスに想いを告白しないのか?」


「……」


「魔王に知られたら大変なことになるだろうが、ラスの傍で腐っているよりはましだと思うぞ。どうなんだ?」


…何故かグラースが隣りにやって来て詰め寄られる形になってしまっていたデスは、座ったままじりじりと距離を置こうとするもすぐに詰められてほとほと参っていた。

だがそれは表情に表れず、ラスは寝ていてもまだ起きているルゥに指遊びをしてやっているコハクをチラ見しながら、ぼそり。


「……言った…こと…ある…」


「それは驚いた。だがラスのことだろうからまともに受け合ってくれなかっただろう?」


「…………」


「なるほど。それでも傍に置いてくれるのがラスのいいところだ。どうせ真に受けなかっただけなんだろうが」


「……」


恋の悩み相談室状態に陥っていることに気付いていないデスは、グラースの淡く膨らんだ腹にちらりと目を遣る。


人とドラゴンが番うことは滅多にない。

ドラゴンは超上級種であり、人を餌のようにしか捉えていないので、余ほどの気まぐれが起きなければ子など到底できるはずもないのだ。

だがグラースの腹の中には――


「なんだ?この子の予言でもしてくれるのか?」


「…………その子…」


教えてくれるはずがないと思いつつも一応訊ねてみた態のグラースはラスと同じ色の瞳を驚きに見開いて続きを待つ。

フードを被っているデスの表情は分からなかったが、口元がわずかに緩んだのは見逃さなかった。


「……その子……いい子に…なる…。子供たちの…牽引役…」


「ほう、牽引役か。じゃあルゥやこれから産まれる2人目の子の傍で守ってやっているということだな」


「……それ以上…言えない…」


「そこまで言っておいて言葉を濁すのか?ふふ、まあいい。お前の口ぶりからして強い子になりそうだ。それを知れただけでいい」


「…もう…寝た方が…いい……」


グラースにはちゃんとテントを張った寝床が用意されている。

ラスたちの厚意に感謝しつつ、テントに入ったグラースは日々膨らむ腹を撫でて笑みを噛み殺していた。


「いい種をもらった」


あくまで、肉食系発言。
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