魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
以前メルリンを訪れた時は、絶えず濃霧が立ち込めていた。

魔界と繋がっていた岩が何らかの原因で空いてしまったのが原因で魔物が大量に現れて、住人たちがホワイトストーン王国の崩壊現場で拾った聖石を使って霧を出したのがそもそものはじまりだった。


「わあ、霧がないと全然違う町だね。人も沢山居るし…この坂上がるのも久しぶりっ」


「こらチビー、はしゃいで転ぶなよー」


ルゥは大きくなってラスの細腕では長時間抱っこできなくなり、しかも身重なので必然的にルゥはコハクが抱っこすることになる。

それはいいのだが――目を離すとすぐに居なくなってしまうラスにはらはらしながらコハクが後を追いかけると、住人たちから凝視されていることに気付いてラスが立ち止まった。


「あ、あなた方は…この村を救って下さった勇者様たちでは!?」


「うん、コーが勇者様だよ。コーが塞いだ岩は大丈夫?ちょっと見に行って来ようかな」


「ああーー!こらチビ!勝手に動くんじゃありません!」


元々ラス以外の者に勇者様だの何だの言われることに興味もなければ、もてはやされることにも何の興味もないコハクは今やトレードマークだった真っ黒なマントを羽織っていない。

それでも真っ黒づくめの服でコーディネートしているので目立つわけだが…今回も一発でばれてしまった。

あっという間に住人たちに群がられたコハクは、片腕にルゥを抱っこしつつもう片方の手でラスをがっちり抱き寄せて離さないようにすると、喜び勇んでラスやリロイたちに話しかけている住人たちの弾ける笑顔に少しだけ頬を緩める。


「あれから変わりないか?」


「はい!あれから魔物は出ませんし、皆無事です。それよりも可愛い赤ちゃんですね、あなたにそっくりだ。聖石はお役にたちましたか?」


コハクが声をかけたのは、密かに聖石を託してきたメルリンのリーダーの男だ。

魔王城でリロイに刺された時、体内に収めていた聖石は砕け散ってしまったが…だが命はなんとか取り留めた。


あれがなければ……


「可愛いだろ、2人目ももうすぐ産まれるんだぜ。あと…石は大切なことに使っちまったんだ。悪いな」


「あの聖石はあなたに託したのだから使い道には干渉しませんよ。勇者様、ぜひ滞在していって下さい。何日でも何か月でも歓迎いたします!」


ラスがきらきらした瞳で見上げてきた。

何を言わんとしているのかすぐにわかったコハクは頷いて歓声に応えた。
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