魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスが小さかった頃から、金色の髪を洗ってやるのが好きだった。

枝毛1本ない髪が風になびく度に大満足して、またラスも文句のひとつも言わずにいつも好きにさせてくれた。

そして今も――


「コーどうしちゃったの?なんか変」


「変くねえよ。今まで色々あってふたりきりになれなかったし、こういう時間って大切じゃんか」


「うん、そうだね。私の手…ちゃんと元に戻って良かった。…しわしわだったから可愛くなかったでしょ?」


シャワーを浴びていたコハクは真っ黒で少し長い前髪をかき上げて鼻を鳴らした。

ラスが可愛くなかったことなど今まで1度もない。

ソフィーの胎内に居た頃から知っていたし、成長する過程を間近で見ていて愛しさが増すばかりだったことをどう説明すればいいのか。


「貴重な体験したろ。人はああやって老いて死んでいくんだ。だから俺はチビに不死の魔法をかけた。かけなかったら、いずれはああなってた。ま、そうだとしても俺はチビを溺愛したけどな」


「そう?ならいいんだけど。動物さんたちが傍に居てくれなかったらどうなってたか…。コー、独りって怖いんだね。怖かったよ、すごく…。でもコーとルゥちゃんが助けてくれたから平気。ありがとう、コー」


はにかんだコハクがバスタブに入ると、ラスは向い合せになりつつ細いがたくましい身体に抱き着いて色ぼけ魔王の鼻の下をだらしなく伸び切らせた。

ぷりんぷりんのぐにゃぐにゃな身体に傷のひとつでもつけさせたくないコハクは念入りにラスのボディチェックを行いつつ、バレッタで濡れた金の髪を留めてやると近距離で見つめ合う。


「俺の奥さんなんだし助けに行くのは当然だろ。そもそも俺が目を離したのが原因だったんだ。チビは目を離すとすーぐどっかに行っちまうからさ」


「ごめんなさいもうひとりでどこかに行かないから」


「嘘つけ!」


ラスの身体をくすぐってもみくちゃになっているうちに、ラスがふとお湯の下を覗き込んだ。


「コー、なんかあたってる」


「我慢だ俺!無事に2人目が産まれるまで我慢!理性を総動員させろ!応援してるぞ俺!」


ラスが笑い声を上げる。

それが、コハクの至福の時。
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