魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
人前に出る時は黒いグローブを嵌めて骨だけの手を隠す。


今まで自身が死神であることを卑下したことはなかったが…ラスたちに迷惑をかけたくない。

そんなデスの思いが働いて手を隠しているのに、ラスはしきりにグローブを外そうとする。


「私デスの手好きだよ?グローブを贈ったのは私だけど…隠さなくてもいいんじゃない?」


「……好き…?」


「うん、好き。ルゥちゃんだっていつもデスの指おしゃぶりしてるでしょ?きっと手に肉がついたらデスの指ってものすごく長いんだろうね。見てみたいなっ」


「……じゃあ…後で……外す……。ふたりの…時に…」


「ああ?今聞き捨てならねえこと言っただろ。誰と誰がふたりだって?」


すかさずコハクがデスを問い詰めようとすると、ラスがルゥをさっと抱っこして瞳を輝かせた。


「ルゥちゃん、羊さんが沢山居るよ!行ってみよっ」


…相変らず修羅場にはなり得ない状況にコハクが唇を尖らせながらラスを追いかける。

ぽつんと一人ぼっちになったデスは小さな村を見回して、大量の死の気配を感じ取って村の奥の方を見遣った。


「どうした?」


「……あっち…沢山の魂…弔われて…ない…」


「ここには狼の姿をした魔物が居たんだ。魔王が退治したけど…行ってみようか」


リロイに肩を抱かれると、デスの脚がゆっくり村の奥へと向かう。

死神だからこそ感じた浮かばれない魂の数々。


コハクたちと別れて奥へ進み、屋根の赤い家の前に着くと、庭には土をこのりと持った墓標のようなものがあった。

そこから恐怖や恨み…痛み…様々なものを感じ取ったデスはリロイたちから離れて木で作った十字架の墓標の前に立つ。


「……魂……ここに…沢山…ある…」


本来ならまだ死ぬはずではなかった魂の数々。

手からグローブを外すと、膝をついて土に触れた。

顔を上げると家の窓にはべったり血がついていて、住人たちが今もなおこの場所を怖がって訪れないようにしているのがわかる。


「…魂……安らかに…」


もう1度、土を撫でる。

今まで持ち得なかった感情が働いて漏らした言葉――その直後。


デスの手が、骨ではなくなった。
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