魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
あの時コハクは夕方までに帰って来た。

それもその時はすでにガーネットの原石は磨かれていて、リングとなっていたのに――


「見つからない…そんなに簡単に見つかるわけないか」


頬やマントを煤で汚しながらも懸命に岩を彫っていたリロイは、原石が一向に見つかることなく時間だけどんどん過ぎて行っていた。


…コハクが尋常ではない男くらい知っていたが…

確かに大きな原石ひとつ見つかれば一攫千金だと思うが、要は金目当てではなく、ティアラに喜んでもらうため。


焦りばかりが募っていって、いよいよコハクに頭を下げなければならないのかと覚悟を決めてつるはしを思いきり地面に突き刺した時…

岩の感触ではなく、つるはしの先端が硬質的な何かで弾き返された。


「ん……これは…原石…?」


しゃがみ込んでよくよく観察してみると、少しだけ赤く光っているように見える。

瞳を輝かせたリロイは無心になって地面を掘り下げて、親指程度の大きさの原石を彫り出した。


「これを研磨してリングにすると石はちょっと小さいけど…喜んでくれるかな」


――ティアラはラスを諦めきれない自分をずっと待ってくれていた女性だ。

女性として意識はしていたがラスの存在があまりにも大きすぎて、今までどれだけティアラを疲弊させてきていたことか。


「よし、すぐ持って行こう」


急ぎ足で出入口まで戻ると、コハクはのんびりベンチに寝そべって昼寝をしている。

空を見上げるとすでに赤くなりかけていたので、剣の鞘でコハクの腹を思いきり打って起こすと得意げに原石の塊を見せつけた。


「どうだ、見つけて来たぞ」


「いってえなこのガキ。…なんだ見つけて来たのか。ちっせえけど」


「小さいけど見つけて来た。見つからないよりはましだ」


「じゃあ磨いてくれるとこに案内してやるよ。あーチビに会いてえ」


今まで昼寝をしていたくせに、と突っ込みを入れたかったがそこはぐっと堪えて、コハクの後をついて行く。

外見は正反対な2人が一緒に歩いているとこれもまた注目を浴びていたが、リロイは気が逸っているし、コハクはラス会いたさで急ぎ足。


その頃ラスは呑気に皆とアイスを食べていた。
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