金色のネコは海を泳ぐ
「まだダメなの?婿になれない?他に何をすればいいの?」

フッと、ルーチェに影がかかって……グッと力強く引き寄せられた。

「っ、やだ、ジュストっ」

抱き締められて、苦しくなる。

「僕はどうしたら婿になれるの?どうしたらルーチェと離れなくて良くなるの?」
「は、離れるって……たった3日じゃない」

それも3日目には帰ってくる。

「僕、一緒に行っちゃダメ?」
「ダメだよ。私は試験を受けに行くんだよ……わがまま言わないで」

ルーチェがジュストの背中を優しく叩いて宥めようとすると、ジュストはルーチェを引き剥がした。

「僕はネコじゃない!」

そう強く言ったと思ったら、ルーチェの左手を掴んで自分の右手と重ねた。

ルーチェより大きな手、綺麗な長い指。

「ちゃんと見て。僕の手、ルーチェと同じでしょ?」

ジュストが人差し指と親指でルーチェの人差し指をスッとなぞった。ルーチェは指が痺れるような、熱くなるような、変な感覚になる。

「それとも、ネコに戻るのがダメなの?だったら、ずっと薬飲むから……ずっと人間になるから、早く僕を婿にしてよ」

そのまま……

ジュストはその場に座り込んで、手を掴まれているルーチェも引きずられてジュストの足の間に膝をついてしまった。
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