金色のネコは海を泳ぐ
素早く着替えを済ませて部屋を出ると廊下にはシュンとしたジュストが立っていて、部屋から出てきたルーチェを見たジュストは唇をキュッと噛んだ。その表情に、ルーチェの胸がチクリと軋む。

「ルーチェ……」

ジュストは顔を歪めてルーチェの手を掴む。その手の熱さにルーチェは思わず手を引こうとしたけれど、ジュストが強く握って逃げることを許してくれない。

「ルーチェ、僕のこと……嫌いなの?」
「そうじゃ、なくて……」

また……ルーチェは同じ言葉を繰り返す自分に気づいてジュストから視線を逸らした。

でも、他に何と言えばいいのかもわからない。

「じゃあ……どうして僕の前で笑わなくなったの?」

ジュストに指摘されて、ルーチェの肩がピクッと跳ねた。

そうだ。ルーチェはなんだかこの頃怒ってばかりで……真っ直ぐなジュストの言葉にどう反応していいかわからなくて逃げたり、泣いたり、自分でも変だと思う。

何より、どうして苦しいのかよくわからない。

「キスも、ダメなんでしょ?」

ダメに決まっている。

“好き”の意味がキスをする理由とは違うから。

それに、ルーチェはもちろん、ジュストも“ファーストキス”なのだ。そんな間違いでしたくないし、してもらいたくない。
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