金色のネコは海を泳ぐ
「僕がオトコだから、キスしたいんだって……ユベール兄様は教えてくれたよ」
「ジュ、スト……」

これ以上、どうやって説得すればいいのだろう。ルーチェは弱々しくジュストの胸を押し返した。

人間の姿に長時間戻れるようになって、ご飯もたくさん食べるようになって……体つきも年相応に変わり始めてきた、男の人。

「ルーチェ?僕、ルーチェのことが好き……ねぇ、ルーチェは僕のだよね?」

ジュストがスッとルーチェの腕に手を滑らせる。試験に出かける前に書かれたジュストの名前はもちろん消えているけれど、それを辿るような指先に、ゾクリとなぜか触れられていない背中が甘く疼いた。

そして――

「僕の印、間違ってたんだって……」
「え……?」

とても艶のある声が降ってきて、同時にジュストの柔らかい髪が首筋をくすぐった。

「っ!?」

ルーチェは思わずジュストの肩を掴んだ。だが、耳元でチュッと音がして……チクッとした痛みが走る。

ジュストの熱い吐息が離れていくと、ジュストはその場所を人差し指でツッと突いた。

「……痛かった?でも、これがオトコの印なんだって。キスマーク」
「キッ――!?」

ルーチェの全身の血が顔に集中する。

ルーチェはジュストの身体を思いきり押して拘束から抜け出した。
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