週末シンデレラ
車で一時間半ほどかけて着いた水族館は、多くの人でにぎわっていた。
館内は、薄暗くて青い空間に、いろいろな水槽がぽっかりと浮かび上がっていて幻想的。
「綺麗ですね」
「ああ、普段来ることがないから、たまにはいいな。癒される」
ふたりで並んで、ぽつりぽつりと会話を交わしながら、ゆっくりと歩く。
魚を見ているだけなのに、幸せな気持ちだった。
係長も、同じ気持ちだといいな……。
そう思い、魚を見ているフリをして、水槽のガラスにうっすらと映り込んでいる係長を覗き見た。すると。
「つ、都筑さん。わたしじゃなくて、魚を見てくださいっ」
「カオリさんこそ、今、目の前に大きな魚がいたっていうのに」
お互い、ガラスに映った相手の顔を確認していて、目が合ってしまった。
恥ずかしくて、押さえた頬がどんどん熱くなる。係長はコホンと咳払いすると、案内図を広げた。
「十五時からクラゲのショーがあるみたいだけど、どうする?」
「えっ、クラゲのショーなんてあるんですか!? 見たいっ」
わたしは係長から案内図とショーのスケジュールが書かれた表を奪い取り、場所と時間を確認する。
恥ずかしさを紛らわせるため、というより、せっかくだから思いきり楽しみたいという気持ちと、好奇心が勝(まさ)った。