週末シンデレラ
「また……会ってくれないか?」
また、係長と“カオリ”として会う。それは、嘘をつき続けること。
連絡先を聞かれたとき以外、面と向かって誘われたことがなかった。メールとは違い、表情が見えるというのは断りにくい。
違う……断りにくいんじゃなくて、断りたくないだけ。
わたしが返事をできずにいると、係長に瞳の奥を覗き込むようにして見つめられる。
「会いたいんだ」
「……わたしも、会いたいです」
小さく返事をすると、係長の顔がパッと華やいだ。
「よかった。じゃあ、来週はどうだろう……っと、ちょっと詰めて会いすぎるか。べつに待てないわけじゃないんだけど」
華やいだと思った表情は、わたしを気遣ってすぐに曇りだす。
わたしの彼に対する印象からは、すでに「無表情」という単語はなくなっていた。
「わたしも、来週空いてます」
今日、麻子に連絡をすれば、予約は取れるだろう。
「そ、そうか。なら、来週にしようか。行きたいところがあったら、教えてくれ。また連絡するよ」
「はい、よろしくお願いします。では、気をつけて」
わたしが車を降りると、係長はゆっくりと車を発進させた。
いつまでこんなことを繰り返すのだろう。いつになったら、係長とどうなったら、満足するのだろう。
際限のない「もっと近づきたい」という想いに、自分でもうんざりする。
「正直に話せば、近づけるのかな……」
どちらがいいのか、ずっと考えているのに、いまだに答えが出てこない。
係長の車が見えなくなっても、わたしはしばらくその場で立ち尽くしていた。