週末シンデレラ
「数字、ですか?」
「ここだ。どうして違うのか、わかるか?」
「あ、け……計算式が入ってなかったのかもしれません」
「見直しをしなかったのか?」
「はい……」
「どんな書類も見直しをしてから提出してくれ」
「……すみませんでした」
肩を落として謝る。簡単な仕事ひとつさえまともにできないのに、係長はこんなわたしを好きになってくれるだろうか。
息をついて書類の再作成に取りかかろうとすると、まだそばで立っていた係長が口を開いた。
「仕事の量が多くなると、必然的にミスをする確率も多くなる。それは、わかっているから」
「え……?」
「だが、気は引き締めてくれ」
係長は、わたしが武田さんから仕事を押しつけられていることを、知っていたのかもしれない。
席へ戻る係長を見ながら、目の奥が熱くなる。……泣いてしまいそうだった。
今の優しさは“カオリ”に向けられたものではなく、“詩織”に向けられたもの。
そう思うと、同じ係長からの優しさなのに、“カオリ”でいるときより数倍……数十倍、嬉しく感じた。