週末シンデレラ
わたしの準備を終えた麻子は、メイクを簡単にすませると胸元で切り替えしのあるシフォン素材のワンピースを着た。
どこかかっこよさのある髪型に、かわいらしいワンピースが似合うのかと見ていたら、麻子はゆるいウエーブのかかった、胸元まで長さがあるウイッグをつけた。
それからふたりで街へでかけた。
待ち合わせの時間には余裕があったので、ファッションビルとデパートが立ち並ぶ大通りを歩き、新しい洋服やメイク用品を買った。
オシャレをするだけで、買い物をすることや街を歩くことがこんなにも楽しくなるなんて。
わたしは目を細めずにはいられない夏の夕日を物ともせず、スキップしそうな気分で歩いていた。
「そろそろお店に向かおうか」
ファッションビルから出ると、麻子が腕時計を確認しながら提案してくる。待ち合わせの十八時まで、あと二十分ほどだった。
お店までは、今いる場所から歩いて十五分くらいはかかる。
「そうだね。あー……ドキドキしてきたっ」
わたしはうなずくと、胸を押さえて深呼吸をした。
「大丈夫だって。真面目で誠実な人って彼も言ってたし……。あ、でも無理に付き合うなんてしちゃダメよ。わたしはただ、紹介するだけなんだから」
「うん、わかってる」
彼女の気遣いを嬉しく思いながら歩き出すと。
「いたっ……」
踵(かかと)に痛みが走った。
立ち止まって足元を見ると、そこが赤くなっていた。仕事のときより長い距離を、慣れないヒールで歩いたから、靴擦れをしてしまったらしい。
でも、もうすぐお店だし……これくらいなら、大丈夫かな。
「詩織、どうしたの?」
「あ、ううん……なんでもない」
わたしは麻子の呼びかけに応え、歩みを進めた。