週末シンデレラ


プリンを食べ終えたわたしは、残った休憩時間で仕事を進めることにした。

そして、昼休みがあと十分ほどで終わるころ、総務課の電話が鳴り響いた。

「はい、総務課です」

電話の相手は人事部の人で、部長をたずねての電話だった。しかし、まだ部長はお昼から帰って来ていない。

その旨を伝えようとしたとき、事務室のドアが開いた。帰ってきたのかと思ったけれど、入ってきたのは係長だった。

「申し訳ございません、部長は……」
「カオリさん?」
「――っ!」

係長の呼びかけに、思わず声が出なくなる。

“カオリ”でいるときは、電話応対の声と同じ、少し高めの声でしゃべっていた。

ついに気づかれた? 会社でバレるなんて……最悪。

背中に汗が流れていく。どうやってこの場を取り繕うべきかと考えていると、電話の向こうで「もしもし?」と反応を求める声がした。

「も、申し訳ございません……今、昼休みで外に出ておりまして……」

必死に平静を装い、今度は声を低くして話を続ける。

「ああ……なんだ、加藤さんか」

係長は思い過ごしだと思ったらしく、席に着いた。

よかった……こんなところでバレたら、きちんと話すこともできないもん。

電話を切ったあとも、心臓は痛いほど音を立てていた。


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