週末シンデレラ
「この前の返事なら……最後に聞かせてほしい。今日だけは、楽しく過ごしたいんだ」
今日だけ……って、もしかして係長は、わたしが交際を断ると思ってる?
「あ、ちっ……ちが……っ」
断るわけじゃない。でも、わたしの正体を話しても係長はショックを受ける。やっぱり、話すのは別れ際がいいかもしれない。
「……では、最後に」
わたしは、係長のお願いを受け入れることにした。
一時間ほど車に揺られ、到着したのは大きな中華街だった。近くのコインパーキングへ駐車し、車から降りると街の喧噪が聞こえてきた。
「一度、カオリさんと食べ歩きをしてみたいと思っていたんだ」
「それ、わたしがよく食べるからですか?」
「いや、いろんなものに興味を示すカオリさんが見たいと思ったんだけど……まぁ、たくさん食べるきみを見たいっていうのもあるかな」
「もう、やっぱりそうなんじゃないですか」
楽しそうに笑う係長につられ、わたしも大袈裟に頬を膨らませて笑った。
「今日だけは……」と言った係長は、あれから普通だった。
わざと明るく振る舞うわけでもなく、ただ、今までと同じような態度で会話をし、車を運転していた。
それはまるで、今のままが一番幸せだと言われているようだった。