週末シンデレラ


食べ歩きは、ほとんどわたしの行きたいところへ立ち寄ってくれていた。なのに、支払いは全て係長。

支払いを申し出ても「いいものを見せてもらっているから」と、食べ物を口いっぱいに頬張るわたしを、楽しげに隣で見ているだけだった。

「都筑さんも、もっと食べてください」
「カオリさんが食べているのを見ていたら、それだけでお腹いっぱいになった」
「なら、都筑さんのお腹が空くまで、もう食べません」
「そうか。でも、俺のお腹が減るのを待つのは、無理だと思うよ」
「どうしてですか……あっ! あの肉まん、美味しそうっ」
「ほら、やっぱり無理だ」

係長は声を出して笑う。結局、肉まんも買ってもらい、けれど、今回は係長も一緒に食べてくれた。

それから多くの人が行き交っている中を、人にぶつからないよう係長に誘導してもらって歩いていると、彼がふと足を止めた。

「……あれが食べたい」
「なんですか?」

ここに着いてから、すべてわたしが食べたいものを言うばかりで、係長はなにも言わなかった。

初めて食べたいと言ったものが気になり、係長の視線のさきをうかがう。すると、ハリネズミの形をしたカスタードまんが売られていた。

手のひらサイズのそれは、できたてらしく、ホカホカと湯気を立ち昇らせている。


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