週末シンデレラ


レストランから出ると、近くにあった海沿いの公園を歩いた。

街頭が道を照らし、港を行き交う船が見え、秋めいた潮風が髪を撫でていく。

「来週、社員旅行があるんだ」
「へぇ……そうなんですね」

あえて「どこへ行くんですか?」と、話を広げることはやめた。

自分も参加する社員旅行だから、話したあとのことを考えると、知らないふりをするのが恥ずかしくなってしまった。

「今年は、海辺で釣りをするらしい」
「のんびりできるといいですね」
「どうかな。昼間はともかく、毎年、夜はただの宴会になるから」

係長の言葉にわたしは笑った。

たしかに、わたしが去年初めて参加したときも、夜は飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎで、そのまま宿泊するのをいいことに夜中まで盛り上がっていた。

今年もそれが繰り返されるのかと思うと、少し憂鬱になる。

それに、係長とはどうなっているかわからないし……。

“サトウカオリ”が“加藤詩織”であることを告げたあとの、係長の反応が全く予想できない。

社員旅行が楽しいものとなるか、苦しいものとなるか、それも今日決まる。

旅行が終わるまで返事を待ってもらうのも考えたけれど、今朝迎えに来てくれたときの係長を見て、引き伸ばすのも申し訳なくなった。


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