週末シンデレラ
「麻子、ちょっとごめん」
「詩織、どうしたの?」
引き戸の前に立っていた麻子によけてもらい、わたしは音を立てないようそろそろと戸を開けた。
「紹介なんて言ったら、お前来ねぇだろ」
「当たり前だ。だいたい、俺が嘘や隠し事が嫌いなのは知っているだろう。それをこんな風に呼び出して……」
「悪かったって。けど、そんなに怒ることねぇじゃん。かわいい女の子と飯食うだけだぞ。ちょっと落ち着けって……ほら、座ってさ」
開いた隙間から覗くと、信じたくもない光景が広がっていた。
誰が座るのだろうと思っていた席には、一也さんに促されて座る都筑係長の姿が……。
「う、うそぉ……」
その場にひざから崩れ落ちてしまいそうになる。麻子にしがみつきながら堪えると、彼女は心配そうな顔で覗き込んできた。
「詩織、さっきからどうしたの?」
「か、かか……」
「か? 蚊がどうしたの?」
「蚊じゃなくて……係長なの……あの人、さっき話してた係長なのぉ……っ」
「えぇっ……ちょ、本当に?」
「うん……本当に……」
驚きを必死でこらえ、小声でたずねてくる麻子に、泣きそうになりながらうなずく。声は震えていた。
信じたくない。だけど、戸の隙間から見える男性はまぎれもなく都筑係長だ。
「どうしよう……」
こんなに頑張ってオシャレして、男性を紹介してもらっているなんて、あの係長に知られたくない。絶対バカにされる。