週末シンデレラ
やがて飲み物がくると、一也さんが乾杯の音頭を取った。
「今日は堅苦しくならず、楽しく飲みましょう!ってことで……乾杯!」
皆でグラスを合わせる。この場に嫌々いるはずである係長も、空気を読んだのか、きちんと乾杯をしていた。
「じゃあ、まずは簡単に自己紹介しよっか。俺はー……さっき詩織ちゃんに挨拶したからヨシとして、この子が俺の彼女で麻子」
「び、美容師やってます。で、この子がわたしの友達で……」
麻子が恐る恐る視線を送ってくる。名前を言わないのは、きっと麻子もまずいと思っているからだろう。
「あ、か……サトウカオリです」
咄嗟に思いついた名前を述べる。麻子は話を合わせると言うように小さくうなずいてくれたが、一也さんは目を丸くしていた。
「あれ? 詩織ちゃんじゃないの? 麻子もそう呼んでなかったっけ?」
「え、えっとねぇ……詩織っていうのは、あだ名で……ね?」
そういうことにしなさい、とばかりに強く話をふられる。たしかにあだ名ということにすれば名前の説明がつく。
いい提案をしてくれた麻子に感謝しつつ、わたしは必死に“シオリ”をあだ名にするための作り話を考えた。
「そ、そうなんです! 高校の時、同じクラスに“カオリ”っていう名前の子が、わたしの他にもう一人いて、まぎらわしかったので、本好きだったわたしが本の栞(しおり)から“シオリ”って呼ばれるようになったんです」
く……苦しい。もともと口下手なのに、作り話なんてうまく話せるはずがない。バレてしまわないだろうか……。