週末シンデレラ
ワンピースの下に大量に流れる汗を感じながら、ゴクリと唾を飲み込む。
うつむいたまま上目で係長を見ると、さきほどから変わらず無関心そうな顔のままで、その表情から気持ちは読み取れなかった。
「へー……まぁ、あだ名ってそんなもんだよね」
一也さんはなにも疑問に思わなかったらしく、あっさり納得するとビールを口へ運んだ。
きっとわたしに会う前から麻子に名前を聞いていたはずなのに、髪型同様、気にならないらしい。
ビールジョッキをテーブルに戻すと、お通しをつまみながらしゃべりだす。
「あだ名なら俺も呼んでいいよね。もう“詩織ちゃん”で慣れちゃったからさぁ」
「あっ、はい」
やはり一也さんはわたしの話を信じてくれたらしく、そのまま話を続け、係長のほうを指さした。
「でさ、詩織ちゃん。こいつが俺の友達で征一郎。怖そうな顔してるけど、結構いい奴なんだよ。仲良くしてやって」
「は……はい」
仲良くなんてできるはずもない……というより、これ以上関わりたくない。
その気持ちを抑えてうなずくと、係長は面倒くさそうにため息をついた。
「俺は都筑征一郎。悪いけど、恋愛する気はないから」
「へ?」
「彼氏を探しているなら、他をあたってくれ」
係長は落ち着いた声でハッキリと言う。
この部屋に入る前に聞いていたのでわかっていたことだけど、目の前で言われると少し腹立たしい。